真夜中のアリス

弱音をひとつ零す。そうならないように、数々の出来事をこなしてきた筈だけれどやはり不安は拭えない。

「ねえ瑠衣ちゃん。どうして瑠衣ちゃんがアリスなんだと思う?」

「…,?」

「どれほど傷付いて苦しんでも、それでも夢を心に秘め、時計兎という幸福を追いかける女の子はみんなどんな時だって夢みる”アリス”なんだよ」

そう言って笑う彼は、あの暗い雨の日に出会った漆黒の時計兎さんそのものだった。
揺籠の更に奥の大きな木の株、小さな白いドアが開く時が来るのを今か今かと待ち焦がれているようだ。

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