真夜中のアリス

「…つかさ?」

「わたしのことわかるの、瑠衣ちゃん…?良かった、良かったよぅ….」

何故か思うように身体が動かせず顔だけを横に向けて、泣き崩れている親友のつかさに戸惑いを覚える。なんで泣いてるのか、なんであたしは寝かされているのか。
けれどひとつだけは確実なものはある。

「泣かないで、つかさ。もう大丈夫だから」

「え….?」

「もう大丈夫だよ、ちゃんと前を向けるから」

薬品の匂いが強いこの部屋に不似合いな、彩り美しい薔薇と記憶に新しい金木犀の薫りが部屋を突き抜けていった、そんな気がした。
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