真夜中のアリス


数ヶ月前 病院にて。

「えー!瑠衣ちゃん全然覚えてないの!?」

「う、うん。気がついたらここで寝てたみたいだったし…」

シャリシャリとつかさが剥いてくれた梨を食べながら頭を抱え悩ませる。
盛大な溜息。しかし仕方がない、あたしは全く覚えがないのだから。

雷雨の影響で休講になったあの日、あたしはフラフラとふらつき気味で傘も差さず歩き増水して氾濫しかけていた川に身投げしたらしい。

あの日やけに憔悴しきっていたあたしの様子を燻しんだつかさはこっそり付けていたらしく、身投げした瞬間にすぐ助けを呼んでくれて事なきを得たのだけど一昼夜目覚めることなく、一種の昏睡状態になっていたようだ。

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