真夜中のアリス
シャリシャリと皮剥きをしていたつかさの手が止まる。心底驚いたように、瞳を大きく丸く開き口をパクパクさせていた。
「だ、大丈夫なの?まだ辛いでしょ…」
「悲しいし胸が張り裂けそうに痛いよ。だけど、約束したの。もう泣かないよって。」
退院後、すぐにあたしはつかさやゼミの友達とずっと避けていた、朱鳥くんが今眠っている場所に初めてやってきた。
みんなあたしに気を使ってなかなか誘い辛かったようで、そう話した時は少しの驚きと心配の声、そして二つ返事の言葉が返ってきた。
お寺の裏は野山のようで、春になれば色とりどりの美しい草花が咲き誇り彼を包み込むことだろう。見ているだけで穏やかな気持ちになる。
そして手を合わせ、約束を口にする。笑顔で前に進んでいくよ って。
ふわりと薫る、金木犀の匂い。朱鳥くんが返事をしてくれたような気がした。