真夜中のアリス

止まない雨の中、全身ずぶ濡れでやはり多少の寒さは否めない。それでも何故か自分の中で先程のように”家に帰る"という選択肢が消えていたということをまだ気付いていなかった。

「って!あのウサギもいなくなってるし!しまった…?」

目を逸らした先に見つけたのは2列に並んだダストシュート。先程男が腰を掛けていたものとはまた違うタイプのもののようだ。どうやら、燃えるゴミと燃えないゴミに分別される為に設置されているらしい。が、こんな裏路地の隅にあるものだからだろう、あまり使われた形跡が見られず酸性雨のせいで所々に 錆が見られるが、至って綺麗なまま設置されている。

「…風が聞こえる…?」
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