真夜中のアリス
大好きだったあの人が消えてしまった。
消えたというよりも、彼に魅了された女の死神が手招きをして、あちらの世界へと招待してしまったにちがいない。
そうじゃなければ、あの人はそう簡単にあたしを置いていなくなるはずなんてないもの。
あの人がいなくなった日から、ずっと雨が降り止まない。
事実を受け入れる事を拒んで、涙を流せないでいるあたしの変わりに空が泣いているかのように。
『元気を出して』
『辛いけれど いつまでも悲しんでいるとあの人も悲しいままだよ』
あの日から、周りはそういった類いの言葉ばかりをかけてくれる。あたしを叱咤激励するために。
いつの間にかそれは、脳にインプットされて、いつもひょんな時にそれは再生され、リピートされ続けている。
「そんなの、わかってるよ…」