真夜中のアリス
そんな声が聞こえてくる。信じられなくて耳を澄ましてよく聞いてみる。ブツブツと独り言を繰り広げているようだ。
ウ、ウサギが話をしてる!?まるでメルヘンチックで非現実な事が目の前で繰り広げられて、思考が追い付くことが出来ない。
「ちょっ、ちょっとそこのウサギ!ちょっと待ちなさいよ!!あんた、一体なんなの!」
自分でも気付かないうちに、そう大声で呼び掛けている。けれど兎は足を止めることなく、こんなにも暗闇が続くというのにそれをものともせずけれども、焦りながら物凄い勢いと気迫で駆けてゆく。
そんな止まらない兎に業を煮やしあたしも後を追うように駆け出す。おかしい話だけれども、あんなにも腰を痛めていた筈なのにこちらも痛覚が消えていてそれ以上に身体がいつも以上に軽く走りやすさを体感する。