真夜中のアリス

自分ひとりだけの息遣いだけが谺する、闇の空間。静寂は冷静さを取り戻させ思考が纏まりはじめた今、新たな感情が芽生える。

「…なんで…あたし…。こんなとこに独りでいるんだろう」

呟いてみて苦笑する。自分の置かれた状況がまだよくわかっていなかったみたいだ。

「何…言ってんの。どこにいても、あたしは独りぼっちじゃない…」

ぽつりと吐いた言葉を、それを同調する人も否定してくれる人も誰もいない暗闇の静寂。
まるで躊躇の森の中だ。この先に進むのも戻る事も憚れ、どうすればいいのかさえも検討がつかないのだから。こみ上げてくる何かに気付かない振り。




< 49 / 349 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop