真夜中のアリス
[瑠衣ちゃんどうしたの?…また泣いているの?]
辛くて寂しくて泣きたくなった時、何時だってそう言いながらあの人は頭を撫でてくれて傍にいてくれたっけな…。
そう思うと想うほど止まっていた涙がひとつ、ふたつと雫のように足元を濡らす。
「…っ、朱鳥くんの嘘つき…」
目の前の景色はどうしても黒く塗り潰されているようにしか見えず、恐怖ばかりが先行して一歩を踏み出すことも出来ず膝を抱えて肩を震わせる。
「…っ、ひっく…」
[瑠衣ちゃん、泣かないで。
瑠衣ちゃんが泣いているのを見るのは…辛いから]
聞こえる、そんな声。驚いて顔をあげて周りを見渡す。そこには変わらずの黒と静寂な木々の無音世界だ。改めて落胆する。
「…、当たり前よね。どこにももう…いないんだから…」