真夜中のアリス
ねえ、朱鳥くん。聞こえてるかな。
あたしさ…泣きたくて泣いてるんじゃないんだ。
悲しませるのは辛いけれど…
「朱鳥くんのいない世界になんて戻りたくない。だってもうあたしには、何処にも居場所なんてないんだもの…」
そう思うと、瞳には更に涙は溜まり溢れだそうとしている。
「もう、アリスはー…。いつまでも泣き虫さんなんだからっ」
また新たな声がして、声がする方に視線をやる。
「…あ、れ…?だって…」
そこには、走り去って行ったはずの二足歩行の黒ウサギがいつの間にか隣に立ち、あたしの髪を撫でている。ウサギに慰められるとかどんなだけなのよ、あたし。