真夜中のアリス
「女王さまってね、怒らせると凄く怖いんだ。
…けれど、アリスが独りで泣いている方が僕にとってはそれ以上に怖いことなんだよ。だから…泣かないで。」
「…ウサギ…」
何時だってあの人がしてくれたようにウサギは、あたしの髪を撫でてそっと涙を拭ってくれている。その手付きや暖かさは動物だと思えないほど。まるであの人を彷彿させるには上等な動きだった。
「う…っ、ひっく…、ウサギぃ…」
可笑しい話だ。
あんなにも…涙を流すことが出来なかったのに、こんな得体も知れない動物の前でそれが止められないのだから。幸か不幸か、ウサギが溢した言葉でさえ…あたしは聞き逃していた。
「もう、アリスは本当に変わらないのだから…。
だから彼も心配でおちおち眠っていられないんだよ」