真夜中のアリス
「街…。なんてあるんだ」
独り言のように呟くのだけれどもウサギはそれを聞き逃さず、心外したような顔つきであたしを見る。そして、至極当然だと云わんばかりに口を開く。
「当たり前じゃないか。アリスたちにとってはアナザー、パラレルワールドだとしても僕らはここが現実世界なんだから」
何当たり前なことを言っているの?
と言いたげな瞳が憎たらしい。引き攣る口角を無理やりあげながらこの小憎たらしいウサギに一言物申す。
「ほんと、あんたウサギのくせに可愛いくない」
「それこそ心外だね。アリスの可愛さには劣るけれど、そこそこ愛らしいとは思うけどな」