真夜中のアリス
思いもよらなかった、嫌みのつもりで吐いた言葉がこんな形に返ってくるとは。逆にしてやられた気分だ。
ばくん ばくんと心臓の動きがやけに激しい、動悸は早まっていく一方だ。
何故だかわからない、けれど、これは絶対そうだ。“可愛い”なんて言葉、あの人以外に言う奴なんて誰一人もいなかったから。
「(いくら否定しても、朱鳥くんはずっとあたしのこと…可愛いって言ってくれてたもんな…)」
そう言ったあとの穏やかな笑顔が大好きだった。だから不覚にも、あの人の面影をこのウサギに感じてしまっただけだ。
そうでなければ、ウサギごときの言葉でなんか顔が紅潮したりなんかしない。絶対に。
「…ウサギのくせして生意気ー!」