真夜中のアリス

朱鳥くんと離ればなれになってしまった…、あの日に比べてしまえばもう恐怖するものなんてない。そっと瞳を閉じてそう自分に言い聞かす。
そして、今度あたしから口を開く。これを今、聞いておかないともう聞くことが出来ない気がしたからだ。

「…あのさ、ウサギ。言いそびれてたけどあたしの名前、瑠衣って言うの。
だからどうしてあたしの事を…“アリス”って呼ぶか教えてくれない?」

赤い瞳を一瞬伏せ、ウサギも静かに口を開く。少しばかり淋しそうに。けれども森の対談の時のように…もう背を向けて走り去ろうとはしていない。
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