真夜中のアリス

Queen's talk


◆+とある大広間+◆


「…ったく。時計兎(ウサギ)さんは一体何処を寄り道してるのやら…」

その者は宛がわれた、ただ、ただ広い部屋を苛々した様子を見せながら、スカートの裾を翻しながら右往左往縦横無尽にさ迷い歩く。
上座に一脚の王座。そしてその隣には美しく咲き誇る薔薇を活けた花瓶。それ以外の調度品は見受けられず、シンプルといえば聞こえがよいがもの淋しい、との表現の方がしっくりとくる。
苛々を隠そうとせず、歩き回るその姿。他に類を見ない珍しい短く切り揃えた燃えるようなスカーレット、赤髪を靡かせて赤が栄えるようにとモノトーンの髪飾りと此方も朱色を基調にした美しいドレスに身を包んでいる。
幼さと可憐な少女の面影を残して、外見だけでは性別を確定させるのは不可能なユニセックスな容姿。それがこの国の“女王”。
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