真夜中のアリス
ウサギは慌てながらも的確に、シルクハットの中をガサゴサと何やら準備を始めている。
「ウ…ウサギ…?」
「アリスごめんね。女王さまの献上品である、帽子を取ってきて城へ行ってこなきゃだから、ここで待っていてくれないかな?」
それだけ話すと、進路方向に身体を向けて、言葉通り本当に一人(?)であの白亜の城へ走り去ろうとしている。
「は、ええー…。ちょっと…。…一人とかなんか嫌だなぁ。」
見慣れた街といえどやはり心細いことこの上ない。引き留めるべく、ウサギに告げるも当の本人の耳には届いていないみたいだ。