真夜中のアリス

無風だった筈なのに、走り去った瞬間ふわっ生暖かい風が吹く。と同時にふわりと感じる懐かしさ。それは。

「俺が帰ってくるまで…絶対そこから動かないでよ!」

ウサギからメッセージ。
またもや、ウサギからあの人の面影を感じる。驚いて走り去った方向に視線を送ると、その姿はもうどこにもなかった。

「…早っっ!!」

やはりいくら見慣れた街、既視感があるとはいえどこれまで隣に温もりが存在していたせいだろうか。なんだか肌寒く感じ寂しさが心を支配する。
橋のすぐ側にあったベンチに腰を下ろし行き交う人々を見つめながら手を握りしめる。

「(…一人が怖いとか…どんだけ構ってちゃんなのよあたし…)
< 95 / 349 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop