真夜中のアリス
「結構こうしてんのも暇だなあ…」
ベンチに腰を下ろし早数十分。堪え性のないあたしは足をブラブラさせるぐらいしか暇つぶしの方法を思い付かずそれさえも限界に近かった。
待っててって言われた以上、移動するわけにもいかない。けれどただ待つのも耐え難い。
1人で悶々としている中、突如嵐のような突風が街全体を襲う。木々は揺れ花は花吹雪のように舞い上がり、あたしの髪も一瞬で空を泳ぐ。
「きゃっ…。もう何よこの風…」
髪を梳かしながら視線を戻す。その先に。
ふわり。 風にのって舞い踊る黒髪。
そして、黒の隙間からうっすら見える白雪の肌。それらから視線を外す事なんて、今の自分には出来る筈がなかった。
「あ、あすか…くん…?」