俺は、天真爛漫なあのコに流されている


 あの角を曲がったらすぐに例の空き家か。

 誰かに拾われりしてねぇかな。

 しかし近づくにつれ、あの子猫の鳴き声が聴こえてくる。


 あーあ。やっぱりまだいるのか。

 捨てられてから、もう三日も経ってるのに。

 段ボールのある玄関先には屋根はあったから、雨は余裕でしのげてるはず。

 また覗いてみるか。

 と、角を曲がりかけたが、すぐにピタッと足を止めた。


 誰かいる。空き家の玄関先で、ピンクの傘をさしたまま座り込んでる。


 傘からチラッと覗いた横顔は――

 あ、湯川だ。

 一人か。山村と姫野は一緒じゃないんだな。

 少し後ずさりをし、湯川に見つからないように角の陰に隠れて様子を伺った。

 こんな風に覗いてるとこを、誰かに見られたら絶対怪しまれるだろうな。

 でも、無性に気になる。


 子猫もだけど……湯川も。

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