俺は、天真爛漫なあのコに流されている
*


「やだぁ! このコ、ヤバくなーい?」


 何だ?

 あいつら、朝の通学中にあんなところで何騒いでるんだろ?

 同じクラスになったばかりの女子三人組。

 空き家の玄関先で、三人で何かを囲むように座り込み、キャアキャア声をあげて楽しげに騒いでる。

 名前は確か、ショートカットが山村で、茶髪のロングが姫野だったよな?

 あと、あのボブカットは、えーと……

 そうだ、湯川。湯川って言うんだった。

 入学してから二ヶ月目で、クラスメイトの顔と名前が、やっと一致出来るようになってきた。

 しかしなんか苦手なんだよ、ああいうイマドキの女子って。人のことをあることないこと言って、キャッキャ面白がって騒ぐし。

 俺も剣道しか興味ない性格だから、よく陰でいろいろ言われてきたなぁ。『剣道バカ』とか『頭固そう』とか。

 きっとあいつらも、俺のこと良くは思ってないだろう。

 何やってるか知らないけど、横目でチラ見しつつとっとと通りすぎよう。

 三人組とは距離を保ちつつ通りかかった。

 すると、


「わぁー、見てー! 超かわいいー!」


 と、山村が高々と持ち上げたのは──


 猫?


 黒い子猫だった。女子の手でも余裕で囲めるぐらい小さそうな。

 山村の手に囲まれながら「ミャーミャー」と高い鳴き声をあげ、短い足を泳ぐようにちょこまかと動かしてる。

 三人がその仕草に萌えたのか、更にキャアと盛り上がった。

 なーんだ、猫か。たかが猫でよくあんなに盛り上がれるよなー。俺はあんまり興味ないけど。

 さっ、とっとと学校へ行こう。

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