俺は、天真爛漫なあのコに流されている


 湯川だというのは伏せて、『折り畳み傘を持ち主に返したいから、代わりに書いてくれないか?』とお願いしたら、麻衣は『いいよー』と快く引き受けてくれた。


 内容も麻衣にまかせたら――


〈折り畳み傘の持ち主様へ

 この傘で子猫ちゃんを雨から守ってくれて、どうもありがとうございます。

 これからはこちらで大事に育てますので、どうか安心して下さいね!

 子猫ちゃんの新しい飼い主より〉


 丸字で、いかにも女子らしい文章に仕上がった。


 男が書くよりも、こうして女が書いた方が柔らかいし、湯川も余計に安心出来ると思った。だから麻衣に頼んだ。

 それに、バレたくなかった。

 あんまり話したことがない、その上、湯川が苦手であろう俺が拾ったと知ったら、せっかく喜んでいるのにガッカリさせてしまう。

 だから、湯川にも誰にも見つからないように朝早くに行って、子猫が入っていた段ボールに、折り畳み傘と手紙を置いておいた。

 それで、あぁなったと。


「この文章からして、きっと優しくて可愛らしい女のコが拾ったに違いないよ。
はぁー本っ当ーに良かったぁ! うわぁーん!」


 ホッとしながら、また泣きだしたし。

 ほらな、麻衣に頼んで良かった。

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