俺は、天真爛漫なあのコに流されている
後編
*


 二学期に入って間もなく、剣道部はすぐに始まった。

 だだっ広い剣道場で、竹刀を叩く音と、当てた箇所を叫ぶ声が飛び交う。

 男子が圧倒的に多いが、女子も数人いる。


「ふぅー。あっつ」


 自主練習を抜け出した俺は、道場の出入り口近くで面を脱ぎ、頭に巻いた手ぬぐいを取った。フェイスタオルで、顔と首をまんべんなく拭いた。

 あーずっげー汗かいた。

 自主練の時間はまだ終わらなそうだから、今のうちに一回顔洗ってこよう。


「ねぇねぇ。今度の文化祭さ、誰とまわる?」

「私はたぶんクラスの友達かなぁー」


 ふと、聞こえてきた会話は、俺同様休憩していた女の先輩だった。

 文化祭か。そういえば11月初めだったっけ。


「私も友達とまわる予定。けどさ、友達とまわるのも楽しいんだけど、一度でいいから好きな人とかと一緒にまわってみたいよねー」

「あー憧れるわ、それー」

「それまで告白出来ればの話だけど」

「それまで告白出来なそうな話だけど」


 自虐的な女子トークでキャハハと盛り上がってる。


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