俺は、天真爛漫なあのコに流されている


「でもさぁ、こんな小さいのに可哀想だよねぇ。
 捨て猫だなんて」


 え?


 姫野がポツリと発したのを耳にしたら、自然と足が止まった。


 捨て猫だって? ウソだろ、まだあんなに小さいのに。


 山村と姫野の間から、段ボールが置いてあるのが見えた。その側面には『お願いです。誰か拾って下さい』と、マジックで大きく書かれている。

 はぁ。他人に責任を丸投げかよ。どんな事情かは知らないけど――


「こんな風に捨てないでさぁ、ちゃんと自分で新しい飼い主を探せばいいのに! 元・飼い主、マジでムカつくー!」


 なっ。


 俺が、心の中で言おうとしたセリフと、似たようなことを言い放ったのは――

 ボブカットの湯川だった。

 あの『天真爛漫』な湯川と、意見がシンクロするとは。


 そう。あの湯川は、はたから見てもわかりやすい。惜し気もなく、いつも感情をあらわにする。

 三人の中で、一番インパクトのある女子だった。

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