俺は、天真爛漫なあのコに流されている


 麻衣は「お邪魔しましたぁー」と言いながら、ショコラと家へと入っていった。


 やれやれ、やっと嵐が去ったか。

 さてと……。ここからは、懺悔(ざんげ)の時間だ。

 せっかく両想いになったのに、嫌われるかもしれない。


「湯川……ごめん」

「あ、ううん全然っ。可愛い妹さんだね。明るいし。なのに私ってば何だか緊張しちゃって。人見知りはしないはずなんだけどねー」

「麻衣のことも、あるんだけど……」

「え?」

「その……ショコラって名前……」

「あ、そうそう! 猪瀬は信じられないかもしれないけど、私も名前つけるとしたら『ショコラがいい』って思ってたの! すごい偶然でビックリしちゃった!」


 湯川は、心からそう信じてるみたいだった。

 偶然……か。

 このまま偶然で話を合わせれば嫌われずに済むし、それだったら運命的な出来事としてキレイに終わるところだけど、それじゃあ湯川を騙すことになる。

 やっぱりちゃんと湯川に事実を述べよう。嫌われてもしょうがない。覚悟を決めた。

< 53 / 64 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop