俺は、天真爛漫なあのコに流されている

「じゃあ……私も、猪瀬に謝んなきゃいけないことがあるの」

「え? 湯川が俺に?」


 何だろ?


「私も実は……猪瀬のこと、盗み見してたんだ」

「……は?」


 湯川が俺を、盗み見?

 何だそれは。まさか、変なヤツだったりするのか?

 ハッキリ訊かないと、すんごいハラハラする。


「それって……何を?」

「あの猫ちゃんが……ショコラが初めて捨てられてるのを見た日」

「……え、あの日?」

「そう」

「……あ。ちょっと離れたところから俺が見てたの、気づいてた?」

「そうじゃなくて……私達が去ったあと、猪瀬……ショコラといたでしょ?」

「……え?」


 湯川達が去ったあとって……まさか。

 それが何かとわかると、変な緊張感が出てきた。


「ショコラを持ち上げて『可愛いな、お前』とか言って、笑ってた時……」

「っ、マジで!?」


 あ、あれを湯川に見られてたのかっ?

 いたたまれなくなり、全身の血が急上昇してきた。


「ごめん、勝手に見てっ。私、やっぱりショコラが気になって戻ってきたのっ。そしたら、猪瀬がいたから行きづらくなって。
 でも、何か気になってその場から離れるに離れられなくてっ」


 まさか、湯川があの時いたなんて。

 マジで、油断した。

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