世界の嘲笑にアルカイックスマイルを
「……せんせ、おそい」
寝起きの掠れた声。それすらも俺を煽る。
『悪い、生徒に捕まって』
「、えきまで……いかなくてよかった、でしょ」
どこか舌ったらずな話し方をする彼女が可愛くて、頭に手を伸ばせば、彼女はぽつりと呟いた。
「せんせ、初めて、なまえよんだね」
確かに、言われてみれば。
今まで名前を呼ぶ必要もないくらい近くにいたしふたりきりだったから。
『神崎、』
「ありませんせ」
こてん、首をかしげた彼女に触れるだけのキスを落とす。
『佑でいい』
「学校でも呼んじゃうかもよ?」
『まじか』
それは不味いなと、自分の発言に躊躇するも、彼女はニヒルな笑みを浮かべて
「や、嘘」
そうだな、彼女は、咲倖はそういう奴だった。
『………………咲倖』
「ふふふ、たすく」
あっさり、笑顔で呼ばれた自分の名がここまで特別なものに思えてくるとは。
『本当にずるいな、咲倖は』
助手席に彼女を座らせれば、自然とこぼれ落ちたその言葉。