世界の嘲笑にアルカイックスマイルを
「せんせ、」
柔らかな声がして隣にあるはずの温もりに手を伸ばすも、そこにあるのは冷えきったシーツだけで。
舌打ちと共に起き上がって、慌てて時計を確認した。
まだ朝の5時。
安堵のため息を落とすと、今度は彼女のことが頭を占めた。
よくよく考えると名前すら聞いていないな。
俺の職業が教師だって言ったから彼女は俺のことを先生と呼んでいたけれど。
今まで会った中で最高級の女であることは間違いないのに連絡先すら交換しなかったのは失敗したな、と終わらない無限ループに入りそうになって振り切るようにベッドを下りてシャワーを浴びた。
幸い自宅はここから歩いて10分弱だし、家帰って1時間ぐらいはゆっくりできる。
家に帰って1時間の仮眠をとって、電車に乗り、新赴任先の高校に着いたのは、7時半。
先にいた先生方に挨拶をして、担任となるクラスの名簿に視線を落とした。
その後打ち合わせだの始業式の準備だので慌ただしく時間は経ち、お昼過ぎに無事在校生を帰らせた。
休むのも束の間、今度は新入生を迎える準備をしなくちゃならなくて、とりあえず昼飯を食べようとしたまさにその頃。