世界の嘲笑にアルカイックスマイルを
「しつれーしまーす」
何となく、聞いたことある声に顔を上げて瞠目して、目を反らした。
それでも顔をそらせなくて、彼女が俺の隣の富岡先生のところに優雅に歩いてくる様子を見ないようにしつつ見ていた。
「おはよーとみちゃん」
「先生をつけろ先生を、つーかお前またサボりやがって」
「えーやだよめんど」
聞こえてくる会話は確かに高校生で、昨日の彼女とは別人なんじゃないかと納得しかけたそのタイミングで
「新しいせんせ?すっごくイケメンじゃん。なんでわたしとみちゃんのクラスなのー」
「ったくその台詞嫌ってほど聞いたわ。ついさっき」
「あははー、みんな同じこと言ったんだ?とみちゃん可哀想……
まあでもせんせには劣るけどとみちゃんも中々だって、そう気を落としなさんな」
「うるせぇ、なんで俺がお前に慰められてんだ」
「てへ、まあまあチョコあげるから紅茶貰ってくね。あ、せんせ名前は?」
マシンガントークを繰り広げていたのに彼女は急にくるっと振り向いて、油断していた俺に話しかけてきた。
『……っ、有間、佑アリマタスク』
「とみちゃん名前まで負けてるーあはは。わたしは神崎咲倖カンザキサユキ」
昨日を彷彿させる妖艶な笑みを浮かべると富岡先生の卓上の未開封のミルクティーをかっさらって行った。
「……はあーー、あいつ、神崎はああいう奴なんだよ」
やれやれ、と言いつつも笑っている富岡先生。
まああれぐらいの方が高校生としては楽しいんだろうけど、教師からするとな、注意せざる終えないからな。
「有間もあいつに注意してやって、有間みたいなイケメンが言えば聞くかもしれないし」
冗談混じりに言いつつ、何気根に持ってるなこの人。
大学の先輩である富岡先生は昔っからこんな感じで嫌われないのがうまい。何だかんだ軽そうに見えて実はよく人のこと見ているし。
当たり障りのない返事をしてまた机に向かった。