【続】興味があるなら恋をしよう
「お疲れ様です」

「ん。坂本と、何を?」

あー、課長といえども、坂本さんとの約束だから、言うわけにはいかない…。

「私が、…すみません、ちょっと。
大欠伸しているところを見られてしまって。
コーヒー、濃いブラックでも飲むかって。奢って貰いました」

「そうか。…フ」

「課長は?今から休憩ですか?」

言っても、もうかなり夕方ですが。

「いや。紬と坂本が連れ立っていなくなったから、心配で見に来た」

随分と、課長にしてはどストレートな物言いだ。

「心配するような事はありません、大丈夫ですよ」

「うん、解ってるよ。
気持ちを包み隠さず言ってみただけだ。
これからは、落ち着いた大人ぶる言動は止める事にしたんだ」

はい、そうですか、と返事はし辛い。
私はその言葉に関わる当事者なのだから…。

「解りやすいように妬いて見せる事にした」

課長のように、何事も顔に出さない人は、逆にそれが出来るかなとも思ってしまう。
さっき迄の状況も、妬いていたという事でしょうか。

「…俺も、紬が妬いてくれそうな事しようかな〜」

「え?」

「…これからは誤解が生じるような場面が出来てくるかも、…知れない。信じて貰うしかないがな」

え、どういう事?

「帰りも遅くなる、それなりに。一々連絡をしないかも知れない。あまり、家でゆっくり出来る時間は無くなるかも知れない。
ご飯も一緒に食べられなくなる日が多くなるだろう。
いつも紬に先に寝て貰うような事になるだろう。
休日も仕事関連で出掛ける事が多くなるだろう」

「…課、長」

「そうだなぁ…。密に過ごせるのは今月一杯だなぁ…。
詳しい事は言えないが」

「課長。そんな、ぶっちゃけて…」

「ん?このくらい大袈裟に言っておけば、紬も家でずっとベッタリしてくれるかなと思って、言ってみた。居る時間は貴重な時間だってね。
心配するな、それ程にはならないはずだ。もしかしたら、の話だ」

…。

なったとしても、個人的な感情では、どう変える事も出来ない。仕事だもの…。

「なあ、紬…」

「はい」

「課長〜!部長がお呼びだそうです~」

「あ゙?…はぁ、全く…。ここは休憩室だぞ。
話は出来ない場所だな…な、紬」

…おっしゃる通りです。呼ばれる人は忙しいという事ですね…。

「続きは帰ってから…ん、ベッドの中で、だ」

え゙。

「課長ー?!」

「課長〜…」

「はい、今行くー」

…課長、と呟く声が、社員と被ってしまった。

だって…ベッドの中でって言いながら、頬に唇が触れたんですから。
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