【続】興味があるなら恋をしよう
間違いない。坂本さんだ。
ふぅ。

ガチャガチャ。…カチャ。

「はい」

「藍原…」

「あ、ちょ、ちょっと…」

「大丈夫なのか?なんか食ったのか?熱は?…下がってる?のか?」

「ちょっとー。坂本さん」

「ん?」

「…離れてください」

「久し振りだと思って、玄関で抱き着くの」

…。

「そうでしょうけど、…汗もかいてたし、着替えたけど…嫌です」

「気にするな、俺と藍原の仲じゃないか。
俺なら大丈夫だ。
…着替えた服の匂いか?…お日様の匂いがするぞ」

……。もう。…。

「熱下がってるみたいだな。今、抱いたけど身体熱くなかった」

…。

「どうして…」

「ん?」

「なんでですか?」

来たりして…。

「心配するな。課長には言ってあるから」

「えっ?!」

「当たり前だろ」

「でも…」

「でも、も、へったくれもない。そういう事だ。
大丈夫だから上がるぞ」

あ。
課長了承済み?…嘘。本当なの?


「へえ、なんかいい眺めだなぁ」

あ。

「ちょっと坂本さん?」

「風、気持ちいいな〜。お、藍原は出るなよ。身体、冷やすな。
あ、俺、今日泊まるから」

「えー!!」

「…元気だなぁ…。ホントはずる休みなんじゃないのか?
課長が出張でいないから、会社に行ってもねー、なんて」

「…。違います。そんな事しません。
熱だって本当に凄いあったんですから」

「どれどれ」

腰に手を回されおでこを当てられた。
プシュー…。
坂本さん!
いきなり熱がぶり返しそうな事はしないで…。

「…やっぱり無いぞ。……フ」

このくらいは、俺らは常識の範囲内だっただろ?

「どうせ食欲はあるだろうから、色々買って来た。
晩飯はまだだろ?」

「え?は、はい」

…基本、食べれば治ると思ってますから。

「そういえば、ずっと寝ていて何も食べてなかった…。
…グーッ…」

…なんてタイミング。もう…恥ずかしい。

「お、呼んでる呼んでる。ご飯くれーって、腹の虫が呼んでるぞ?
沢山買って来て良かった。
デパ地下に寄って、お惣菜売り場って言うの?そこで色々買って来たから。
コンビニのよりはいいと思って」

あ…こんなに沢山。

「ご飯、炊くぞ。どこだ?」

「あ、私が」

「場所だけ教えてくれ。俺がするから。
って言っても、もうついて来ちゃってるか。
これか?これだよな」

「あ、はい」

「じゃあ、しっしっ。
ソファーに座ってるか、横になってろ。
心配ない。ご飯炊くのに失敗なんてない。直ぐ炊けるだろ」

「はい…有難うございます」

「ん?…水臭い。他人行儀だな。俺らの仲だろ?」

「もう…」

…どんな“仲”ですか。
でも、ここは昔のように、ですよね。

「直ぐそんな事、言うんですから」

「フ、懐かしいな。会社一発目の日に言った。
俺と藍原の仲だろ、ってね」

好きだったからな。…もう既に惹かれていたからな。
…過去形じゃないぞ。
今もこれからも、ずっと好きだ。進行形だ、永遠にずっと進行形だ。

「はい。超〜迷惑発言で、女子社員に誤解されて」

「まあまあ…。そんな仲なんだから」

…。

だから、どんな仲…。
…確かに関係は持ちましたけど。

…。
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