【続】興味があるなら恋をしよう
「藍原、具合悪くないか?」

「はい、大丈夫です」

「…俺、今回、いい機会をもらったと思ってる。
占いでいう事の、思いがけない出来事に遭うってやつかな」

藍原とこうして会って二人で話せる時間が持てた。


あ…なんだか、坂本さんと話す事が何もかも懐かしい。
出会いは、思いがけない出会い…。
それをいつまでも突き詰めて考えてしまったら苦しい…。

「坂本さん…」

「今は尚紀って呼んでくれ。元々、プライベートではそうして欲しいって話だっただろ?」

ハーフケットを掛けてくれた。

「なんだか、…思い出すな。部屋は違うけど、こうして二人で座ってさ…」

紬を何度胸に抱きしめた事か…。

「風呂上がり、一人だからって気抜いて、裸で転がってたんじゃないのか?
熱の原因の事だよ」

「え゙」

…見てたの?

「フ。図星か。返事がないな」

「だって…、熱かったし。…完全に裸って訳じゃないけど」

「短パンにキャミソールか…」

…なんで解るの。

「フ、…フ。課長が居ないから、だろ?」

「…楽な格好でいいかなって」

「はぁ。だったら課長の前でもそうすりゃいいじゃん」

「だって…」

なんとなく。

「だってって。そんなん、今更だろ?夫婦なんだし」

まあ、ある意味、緊張感を忘れないのはいい事だ、な。

ん?そう言えば、結婚指輪、してないな。

「紬」

「え!」

「なんだ、そんなに露骨に驚くなよ。前もたまには呼んでただろ?紬って。
まあ、人の奥さんを呼び捨てるのは良くないけど、今は課長いないし」

「そうですけど…」

なんだかなぁ。ドキッとするじゃないですか。

「俺が聞く事じゃないけど、式とかは未だしないのか?」

「んー、今のところ具体的には何も決まってないです」

一緒に暮らし始めたら、すっかり落ち着いちゃったし…。

「そうか。じゃあ、未だ婚姻届を出しただけって事か」

「はい」

不意に左手を取られた。
えっ。何?

「…指輪は?仕事があるからしてないだけなのか」

首を振る。

「未だ?」

「はい」

そう言えば、言われる迄、気にした事なかったな。
慌てたように婚姻届を出して、何もかも済んだとどこかで思っていた。
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