【続】興味があるなら恋をしよう
「藍原と課長の事は、未だ誰も知らない。付き合いは公にはなってない」

そうだけど。…だけど、だからと言ってこのまま居なくなったら、坂本さんと姿を消したと思われる。…事実、そうなる…。

「いいから、行くぞ」

「え?」

「荷物、それだけだろ?」

「え、あ、はい、そうです、でも」

元々帰るつもりだった。バッグはしっかり持って来ていた。

「じゃあ、大丈夫、問題無い」

ぐいっと引っ張られて店の外に出た。
あ、…私。まずいと思ってるなら腕を振り解けばいいのに。出来ない事は無い。
ずっと腕を引かれて歩いている。

「坂本さん、…速い、です。もう少しゆっくり歩いて…」

「ああ、悪い悪い。ごめん」

大友さんから離してやりたかっただけなのに。
連れ出すのに夢中になってしまった。藍原の事になると…俺に余裕なんて無い。
……何してんだろうな、俺。…はぁ。

「…フ。コンビニにでも寄って帰るか?取り敢えず、明日の朝ご飯はあるのか?無いだろ?」

あ、…。そうだった。このまま部屋に帰っても何も無いんだった。買い溜めも出来ない。冷蔵庫が無いから。必要な時は、その都度買っている。

「人の事は言えないけど、藍原は今、不経済な生活してんな。な、コンビニに寄って食料を買って…俺の歓迎会をしよう」

「え?何言ってるんですか?もう…今更感満載じゃないですか。それに、今して来たばかりじゃないですか」

「フ。フ…俺ん家なら冷蔵庫あるぞ?欲しいもの買い放題だ」

久し振りだな、こんな掛け合いも。何だか虚しさが先に立って笑えてくる…。


…そうだけど。確かにスイーツも買えるけど。だからって…。

「ゴチャゴチャ考えるな。さあ、寄って帰るぞ」

気が付けば、もう随分と帰って来ていた。いつものコンビニも見えてきていた。

「食べ足りてないだろ?色々と買って帰って、ゆっくり楽に食べればいいじゃん」

あ、…この人は。もう…どうして…。
私が思うように箸がすすんで無かった事も知っているの?
どこから見ていたんだろう。
大友さんの事といい、やっぱりいつもハプニングに現れてくれる。

ブー…、ブー。…課長。

【居ないけど、帰ったのか?】

あ…探してる…。

「課長だろ?」

「あ、…はい、そうです」

どうしよう。

「貸して」

「え、あっ」

【坂本です。一緒に帰ってます。もう部屋に着きます】

「はい、見て。送信するぞ、…はい、送りました」

「あっ、ちょっと、坂本さん」

そんな…。

「ん?事実、そのまんまだろ?さあ、買い物、買い物。
あ、返しとく」

課長は藍原の部屋は知っている。当然、俺の部屋だって知ってる。
来るなら来るさ。……来るだろ。
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