【続】興味があるなら恋をしよう
「実際は…違う」

「は、い?」

「課長の俺なら紬を見ていられる。呼び付けて休憩にも行ける。
現状のまま部長になったら、会社では会えなくなってしまう。
今までずっと同じフロアに居たのに…ほぼ会うことは無くなるだろう。
何より、見張れなくなる」

あ…、う…。
これは…赤くなったり、少し青くなったり、だ。

「部長になるという事は、坂本と紬から目を離す事になるからな。
心配は…何を基準にしたらいいかなんて解らない。
だけど、…今以上の事は無いと思って心配はしていない。
許容範囲の中だ」

…。

「部長に言った事は満更嘘では無い。
部下の事を知らない人間が、その人間の提案する仕事にGOを出せると思うか?
企画の内容だけ良ければいいとは思わない。
最後まで責任を持てるのか、協調性はあるのか、人物を知る事は大事な事だ。
部長はいい事だと言ってくれた。
自分の時も、もっと近い距離に居るべきだったなって。
この部屋を造る事は私の置き土産だ、稟議は通すから大丈夫だと言ってくれた。
と、真面目な仕事の事も踏まえて、…紬の事はずっと見ていられる」


コンコンコン。

「はい」

「坂本です」

…。

「いいぞ、入れ」

「はい。あ。…お邪魔をしてしまいましたか」

藍原…ここに居たのか。

「…全く、坂本の嗅覚というか、このタイミングはなんなんだ…」

「…運命ですから」

え?この二人はこんな話を普通にしてるの?
あ、え、…ちょっと、こんなのを目の当たりにするのは初めてなんですけど。
…えー…。

「居ることを知っていたのか?」

「いいえ、仕事の件で、来ましたが?」

…どうだか。嘘じゃ無いだろうけど、それだけでも無いだろう。

あわ、わ、わ。
ブリザードが…見える。
空気が凍りつく。
二人共、普段の顔と声音のままなのが余計恐いー。

そういえば、三人で顔を会わせるのは、私が倒れた時とか、…日常では無い瞬間ばかりで。
…こんなのは。
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