【続】興味があるなら恋をしよう
「…まあいい。
藍原、続きは家で話そう。もういいぞ」

「はい、失礼します」

出たと同時に部屋のガラスがクリアになった。
…これも…何だか、変じゃない?
私と部長がよろしくない事をしていたとか思われない?
考え過ぎ?
しかも、部長室は、ちゃんと防音されてるらしいし。…。


「書類を貰おうか」

「はい」

「…慣れたか?」

「いいえ、やり辛いです。ほぼ女子社員を相手にですから」

「そうか。まあ、圧倒される事は確かだ。
外の方がそういう意味ではストレスは無いな。
自分次第だな」

「はい」

「急な話だが、今夜、空いてるか?」

「お誘いですか?」

…。フ。お誘いか。
確かに誘っている事に間違いないが。
真面目にボケられている気がしてならないんだけどな。
こういうところが、坂本の話の“掴み”の部分だよな。
上手く人の心を引き込んで掌握するきっかけを作る。
突っ込み返したくなる。

それに、とにかく真っ直ぐ見つめられる。
…男前のこの顔でだ。
変な話だが、オヤジなんか、坂本に見つめられたら…勘違いして目覚めてしまうんじゃないかと思ってしまうな。
ま、無いことか…。
…あー、何の話だ。

「あの時のバー、場所覚えているか?」

「はい」

「坂本の家からは遠くなるが、少し話さないか?」

「はい。大丈夫です」

「時間は…先に終わった方が待ってる感じでいいよな?」

多分ほぼ一緒に終わるだろう。

「はい」

「ん、いいぞ、話は終わった。後でな」

「はい」


んー。…。
顔で仕事をする訳ではないが、坂本に変わる営業は、暫くしんどいかも知れないな。
もう、チラホラと耳には入って来ているが…。

行く先々で、坂本さんは、坂本さんはと、聞かれては、やる気も萎えるだろ。
悪気は無いのだろうが、女子社員というのは、どこも、そういうものか…。

男がいくら発破をかけても、基本、頑張る原動力にはならないからな。
ちょっとした事なんだが。
異性に声を掛けられると違うもんなんだが。

男とは単純なものだ。

彼女が居る事でも、また違うんだがな。
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