【続】興味があるなら恋をしよう
「んん。はいはい、営業課の淑女様方」

「キャー…」

「おしゃべりと同じくらい手を動かしてくださいね。
残業、僕とお付き合いして頂く事になりますよ?」

「キャー、それもいいかも、ね~」

…坂本さん。
己をよく把握して物を言わないと、…危険ですよ。

「手伝って頂きたい書類は山ほどありますから、制限無しにしてもらう事になりますよ?」

…。

「あ、私これ急ぎだった」

「私も、これ終わらせなきゃ」

イケメン課長に残業付きだとなると、早く帰る方を選ぶって事ね。
実に現実的だこと…。
私なら、仕事しながらでも好きな人と一緒に居られるなら、制限無しに残業しますけど?

いつの間にか、おしゃべりは止まって仕事を始めたから、上手く誘導出来たのね。
これで学習したから、必要な残業も中々してくれなくなったかも知れない。
また次の手を考えておかないとしんどいですよ?

外回りをしていても、全く事務仕事が無かった訳ではないけど。
流石にデスクワークのみは疲れるだろう。
しかも、社員の仕事を指導しながらは神経も遣うだろうし。
たまには気分転換出来るといいですね。


私はそろそろ帰る時間。
部長は帰りは遅いって言ってたな。
ごめんって言うから、女性の居るお店とかで接待か何かだろうか。


販売機で缶コーヒーを買った。

「課長、お先に失礼します」

缶コーヒーをバッグから取り出した。
崩れ落ちそうな程、山になった書類の陰に、それをコトッと置いた。

「…藍原…。サンキュ。…はぁ」

「お疲れですね。
仕事ですから、私に出来る事があれば言ってください。
あ、来週からですよ?
今日はもう帰るから駄目です」

「うん、有難う」

「では失礼します」

「ああ、お疲れ様。電車、気をつけて帰れよ」

「はい」

……え。どうして、今日の帰り、部長の車じゃ無いって知ってるんだろ。
まあ、部長になってから遅くなる事多いし。


部長室の前を通った。
部長は居なかった。

帰るメールをしておこう。

【今、会社を出ます。ご飯はどうされますか?
何か軽めの物を用意しておきましょうか?】

ブー、ブー。

【気をつけて帰るんだよ。晩御飯は無くて大丈夫だ。
起きて待たなくていいから休んでてくれ】

【はい、解りました。
匠さんも気をつけて帰って来てください】

【ああ】
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