【続】興味があるなら恋をしよう
「何もありませんよ。
あー、…待ってください、ありました。
すみません、ありました」

「…なんだ」

「風呂を借りたんですが、出て熱かったので、風呂上がりの裸を見せてしまいました。
すみません。
あ、全裸では無いです。
上半身だけですが、すみません。
ちょっと、いや、かなり動揺させてしまったかも知れません。
俺、魅力的な身体なんで」

「…。はぁ…、解った。もう、いい。解った」

「はい、では、失礼します。
あ、これは、許容範囲内の事ですよね?」


この話自体、嘘では無いだろう。
確かに事実としてあった事だろう。
だけど、…違う、だろ。

しかし、…。

誤魔化しただろ。

フッ。許容範囲、か。


坂本、アイツはそう言いながら範囲を広めて行ってるな。
許容範囲と言っても言葉と俺の心情は違うんだ。
何一つ、許容範囲なんかでは無い。そんな許せるモノは無い。
その事も坂本は知ってる。
言葉をギリギリまで利用したんだな。

そして、した事が解ったとしても、俺が許容範囲の中だと言うと知っているからだ。
…やられたな。

んー。
見えてるモノを見張っても、何にもならないな。
はぁ。
見えないモノは、見張りようが無い。


カチャ。

「坂本ー、許容範囲じゃないからなー!」


はい。よく解ってます。
部長、何事かって、社員に見られてますよ?
仕方ない…ここは仕事の話にして収めておきますよ…。

「はい、解りました。有難うございました」

これで、今後は、何に対しても、許容範囲だって言わないつもりかもな。

大人になるのは止めるようだな。
最初から、許容範囲のモノなんて無いんだから当たり前だ。
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