【続】興味があるなら恋をしよう
★☆
「課長、緊張してます?…課長?」
「あ、ああ、…してる、かも」
あ、課長…こんな課長…見たことない。
それだけ実直な人だという事…。
「大丈夫です。日頃の仕事の事を思えば…」
「いやいや、違う。問題が違う」
大丈夫なのに…。
「まず誤解は解かなければいけませんが、うちの親は大歓迎で待ってますから。心配は要りませんよ?」
「そうは言ってもだな。大切な娘さんと付き合わせて貰っているんだ。親御さんはどんな奴だろうと、心配になるだろ?心配しない親なんていないんだから」
「そうでしょうけど…。うちはとにかく、お付き合いしている相手が居るって事が大歓迎なんです」
待ってました!くらいの勢いですよ。
課長、本当に真面目に考えてくれているから、こんなに緊張するんですよね。
…緊張が少しでも和らぐのなら。
「課長…」
「ん?…ん。んん、ん。…藍原、何を…」
唇に軽く触れ、首に腕を回し、抱き着いた。
「あの…これで少しは大丈夫になりましたか?行きましょ?」
「はぁ、…藍原。こんな時にドキドキが増やすような事をするんじゃ無い…。余計落ち着かなくなったじゃないか。…ふぅ」
出掛けられるよう、準備が整っていたネクタイを、課長は少し緩めた。
「え…、失敗でしたか?こっちにドキドキを持って来れば…、多少楽になるかと…」
私にとっては、凄く勇気のいる事だったんですけどね…。
「…これはまた別物だ。もうそろそろ…直ぐ行かなきゃ駄目か?」
「え?そんな事はないですよ?時間はいつでもいいって言ってましたから」
「では。藍原がメイク直しをする時間と、俺がもう少し藍原を頂く時間を所望する」
「え、…え?」
通常では無い精神状態のところを、余計な事をして刺激してしまったようで…。決して、もの凄く長時間という訳ではなかったけれど…。
課長は上着を脱いで丁寧にソファーに掛け、ネクタイを更に緩めた。
あ…、これは…。あっ。
腰抜けになる程の甘くて蕩けるような口づけと、熱い抱擁に見舞われてしまった。
これでは…、私の方が…、立て直す時間を所望したい。
口紅の塗り直しなんて直ぐに出来るけど…熱くなった身体を鎮める方が時間は少々、ううん、かなり必要かも知れない。
勇気を出して、…わざわざ余計な事をしてしまった『罰』だ。