【続】興味があるなら恋をしよう

「課長、…起きてください」

寝室に入りながら課長に声を掛けた。
これが平日の私達の始まり。

「ん」

課長の返事は直ぐ返って来る。
課長は起きている。
だけど、こうして起こされるのを望んでベッドの中に居る。

「紬…ちょっと来て…」

「はい?」

ベッドの側まで近付くと手を引かれた。
ボフッと布団に倒れ込むと、受け止めるように抱きしめられた。

「おはよう…。さて、と、起きるかな」

…これは決して日課では無い。今日はこんな感じにされただけ。
昨日は…もっと。
布団の中に引き込まれて抱きしめられた。
…一昨日は、瞼を閉じたままの課長を覗き込んでいたら、ん〜って頬にキスされた。
…毎朝、何かと甘いのです。でも、日課ではありません。

シャワーを浴び、身支度を整え、ご飯を済ませると、課長はベランダに出て珈琲を飲む。
これは課長の出勤前の日課。
雨の日も欠かさない。
遠くの景色を眺めたり、近くの人の流れを見ていたり。
時間の流れを見ているような…。
街中の喧騒のような事は無い。眺める様子は、静かな瞑想の時間のようでもある。
心が洗われたような清々しい顔をしている。
この時ばかりは声を掛けず、遠目に課長を眺めている。

「フ。一緒に居たっていいのに」

視線を感じるのか、眺めている私に気が付くとそう言う。
一人暮らしの時からの日課の邪魔はしたくないと思っている。
静かな自分の時間は必要。
…誘ってくれても、並んで眺められる私には、未だ、なり切れていないから…。
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