【続】興味があるなら恋をしよう

課長は挨拶に行っていたからだろう、休日なのにスーツだった。
ネクタイは外したようだ。二つ程衿元のボタンが外されていた。
俺は着替えたといってもラフな格好だ。
…服装で真面目、不真面目は無いだろうが、話をするには緊張感が足りなく見えて終うかも知れない。

「お、悪い。入ろうか」

軽く駆けて来た。
俺の見せかけの駆け足とは違う。足取りは重くないという事か…。

「はい」

そもそも俺って、課長に何もされず、こうして此処まで来ている事が不思議な事かも知れない。
ドアを開けた途端、殴られていても仕方ない事をしているのに。
俺も謝ってはいない。

適当に腹に溜まりそうな物と摘める物を頼んだ。
あれこれとメニュー選びに時間を掛けられるような昼食ではない。
歓談ではない。
食べながら話すなんて事は出来ないだろう。

先に食べようという事で、運ばれて来た蕎麦と天ぷらを食べ始めた。
男同士の昼飯は無言でもおかしく無い。
向かい合わせて座った俺達は、ズルズルと蕎麦を食べた。

…へぇ。
蕎麦が意外に旨かった事に驚いた。香りがいい。天ぷらも上手く揚げられていた。

「…旨いな」

「はい。…意外でした」

偶然入った店。食事に重きをおいていた訳じゃない。個室である事をいい事に、こんな、店主に失礼とも言える事を呟いていた。

食事が終わる頃おつまみになりそうな物が運ばれて来た。
アルコールを飲む訳にはいかない。
休みだし、気分だけなら構わないからと、課長がノンアルコールのビールを勧めてくれた。
まあ、何かしら喉を潤す物は必要な訳だけど。
二人揃って烏龍茶というのも何だか味気無いものだし…。
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