【続】興味があるなら恋をしよう
もし坂本さんからメールが来たら、私はどうしたら…。
課長にまず言うの?
行かないのなら、最初から何も言わなくていいの?
こんな事言われましたって、今日の事、まず言っておいた方がいいの?

秘密を持ったみたいで、何か黒いモノが増幅しようとしてるみたいで…。
…内緒になんてできない。


「つ、む、ぎ。どうした?水、出しっぱなしになってるぞ」

後ろから手が出てきてレバーを上げた。

「あっ、ごめんなさい…」

「…俺、今日は会社で叱ってないよな」

頭に手を置かれた。

「課長…」

課長から見たら、六つ下の私は子供っぽいのだろうか。年齢は…徐々に高くなっても、歳の差が詰まる事は永遠に無い。
ずっと子供っぽく見られたままなんだろうか。

「何かあったんだろ?ずっと可笑しい」

隠せない…。

「話しにくい事なら言わなくてもいいし。
もう洗い物終わってるみたいだし、珈琲でも飲もうか」

課長はカップを出し、ドリップ珈琲を準備した。
二人分のお湯は直ぐに沸く。

今、私は、課長の腕に囲い込まれていた。
二つのカップは私の前にある。

ピー。

「沸いたな。紬、熱いから少し下がって」

左腕に囲われた。
どうやら、片時も離さずに作業を続けるみたいだ。

課長が自分の身体から私を離さない時は、私に少し不安を感じている時…。

あの夜…、何となくそんな気がした。
あの時はずっと手を離さなかった。離さないといけなくても直ぐ繋がれた。

言葉に出さなくても、表情に現れて、身体を伝って気持ちが運ばれていく。
今もきっと、私の訳の解らない動揺が伝わっているはず。

「持つ?熱いよ…気をつけて」

自分の分のカップを渡された。課長は課長の分を持った。

このまま移動する方が、余程危ないかも。
だけど、腕は離すつもりは無いようだ。
腰に腕を回されたまま、ソファーへ移動した。

…零れませんように。
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