【続】興味があるなら恋をしよう
おやつ用にオーブンを使わせて貰って焼プリンを作った。
課長の部屋で里緒ちゃんと一緒に作ろうと思っていた。

だから、卵に牛乳を入れる事と混ぜる事をお手伝いして貰った。
今度は課長はわざと居なくて、私と里緒ちゃん二人にしてくれた。

里緒ちゃんは恥ずかしがる事もなく、課長としていたように私に聞きながらしてくれた。

人見知りするどころか、人懐っこくて、可愛らしい。
こういう子供は保育所でも人気者だろうな。


焼き上がった物を冷蔵庫で冷やしておいた。

里緒ちゃんが好きだというアニメを録り貯めたDVDを観た。

要所要所で言われる決まった言葉や、オープニング、エンディングソングなど、よく覚えている。
テレビの前が一人舞台のステージになった。

ある程度のところでおやつを食べ、踊り疲れたのか昼寝の時間になって里緒ちゃんはあっさり眠った。

「はぁ、静かになったわね。
子供はエネルギーのかたまりだから、この起伏の激しさも本当凄いわ。毎日だからね〜、これが」

「ああ、大変だ。起きたら、また、始まるからな」

「このくらいの時は、男の子女の子、大差無いから。
…うちが元気あり過ぎかしら」

「まあ里緒は元気だな。
葵も拓朗も、遺伝子的に元気だもんな」

「ちょっとぉ。それだとうちは、元気だけが取り柄みたいに聞こえる」

「違ったっけ?」

「はぁあ?…違わないけど、それだけじゃ無いから。
ねえ、今のうちに帰ってもいいよ?
里緒、起きてぐずったりしないから、大丈夫よ。
折角の休みなんだし、この時間なら、まだドライブくらい行けるでしょ、ね?」

「お前なぁ…。用済みになったから、サッサと追い払うのか?」

「違う。デートしなさいって言ってるの。
甘く過ごせる時は、甘くよ。
うちみたいに旦那ちゃんが暫く居ないと、甘い以前の問題よ。
ね、紬ちゃん。匠、邪魔だから連れて帰って。
しっしっ」

「フフフ。
課長、どうします?」

「帰れって言ってるから、帰ろう」

「はい、どうぞどうぞ。出掛けてください。
紬ちゃん、今日は有難う。
これからも匠の事よろしくね」

「お前は親か…」

「ええ、この子と里緒の親ですけど、何か?」

「…フ」

「匠抜きでいつでも来て。
大歓迎よ。話したい事もい〜っぱい、あるし」

「有難うございます」

…ちょっと恐いな。

「じゃあ、本当に帰るからな。なんかあったら連絡しろよ」

「解った。愛してるよ〜、匠」

「……そりゃどうも。
ここでいいから。葵も今のうち昼寝しろ。
行こう、紬」

「では、お邪魔しました」

「はい。…よろしくね」

課長の方を見て、それから声を掛けられた。

「…はい」

恐縮しながら返事をした。
課長と葵さんは友達のような兄妹だなと思った。

部屋を出た私と手を繋ぐと、課長も言った。

「…よろしくな」

え?
葵さん達の事?課長の事もって事?

「今日は有難う」

「はい、いいえ、楽しかったです」

「さて、と、ドライブに行く?それとも家に帰る?」

「家に帰りたいです…」

「そうか。じゃあ、帰ろう」

返事をしながら課長の手をギュッと握った。
…伝わったかしら。
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