【続】興味があるなら恋をしよう
そんな事にこだわって何になる。
俺が紬を好きなんだから、葵が面白がって茶々を入れようが関係ない。

…人の久々の恋愛を邪魔しやがって。
一緒に暮らしてるとか、教えるんじゃなかった。
里緒の迎えも、俺一人で行って連れて来れば良かった。
紬を連れて行かない理由は違っていたけど、結果的には、やはり当初のようにしておけば良かった。

あいつ…、これからも余計な話を紬にしそうだし。
はぁ、とにかく仕切り直しだ。

ガバッと起きて、横座りで俺を気にする紬を抱きしめた。

「葵が小姑みたいな事を言ってくるから、負けそうになった」

「え?負けるって、何ですか?葵さんは、何て?」

「…人の行動を見てるような事を言うから」

あー…、今日も葵さんは、まるで課長が言ってるみたいに話してたな。
…課長以上に詳しく話されたけど。

今後危険なのは、私が知りたくない事まで、課長に無許可で話して来てしまいそうな事だけど。

「それで、紬と続けたら、葵の思うツボだと思ったら、あ゙ー、クソーってなったんだ」

それで大の字に…。
投げやりになってしまったのね。

「紬…キスしてくれないか…」

えー。…。慰めて欲しいって事かな?
普通こういう時、言われなくても、こっちからしそうな気がする。
私は気が利かないというか、恋愛慣れしてないから思い付かなかったのかな。
それとも、もう少し見つめ合っていたら、したかも知れないのかな。…思いが足りないのかな。
キスしてくれなんて…。
心臓が跳ね上がってしまうような事を言わないで…。

「フ。凄いな。小動物みたいに早くなった。紬の心臓、動悸がしてる」

ギューッと抱き込められた。

「はぁ、これ以上要求したら、倒れそうかな?」

キスするのを待ってる?…それ以上をも?…私から?

…真面目な課長は、妖艶な課長。中々イコールには導きにくい。だけど、こんな事をいう課長も紛れもなく同じ課長。

仕事をしている時と全然違う。…仕事に色気は困るけど。職場が同じというのも、段々辛くなりそう。…かな。辞めて…転職した方が働きやすいかも知れない。
課の移動になるかも。
でも、今更、それは寂しいかも。

「何を考えてる…」

あ、いけない。
職場で課長の事を考えてしまうから、仕事を変えてしまおうかなんて。安易に口には出来ない。

「上手なキスの仕方…です」
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