【続】興味があるなら恋をしよう
自分でも子供っぽい事をしているのかも。
そんな思いだった。

作戦…。

そんな構えでしている訳ではないし、そんな事は頭に端からない。
ただ好きで堪らないから、可能な限り一緒に居たい。
それだけなんだ。
一緒に居ることで、結果として、紬の意識の中に俺が植え付けられているのであれば、それはあくまで結果論だと思う。
紬が部屋に出掛けて行くまで、その事には何も触れるつもりはない。
いつもの生活はいつも通り。
紬に変わったところも見られない。

考え込んでいる様子も無ければ、心ここにあらず、なんて感じも受けない。
隠そうとするモノがあるなら、それは解るモノだ。
紬は隠せない子だから。

仕事も至って普通だ。大きなミスも無い。
坂本と連絡を取り合っているような様子も無い。

朝、駅から一緒に歩いて来ているのは偶然知った。
それはおそらく、坂本がしている事だろうと思っている。
そんな事を知って、余裕なんて正直無い。
だが…目くじらを立てる事ではない。
同僚が通勤途中で会って、少しの時間を話しながら歩いて来る。
…だけの事だ。
それだけなら一般的にもよくある事だ。こそこそ隠れて何かをしている訳では無い。
よくある通勤風景だ。

違うのは、坂本が偶然会っているのでは無い事、時間…、タイミングを合わせる努力をして会っているという事だ。

部屋に出掛けて帰って来ると言った紬との約束に、掛ける言葉はもう無い。
その言葉を信じていればいいだけだ。

気持ちに時間をかけたとしても…遅くても月曜には帰って来る。
という事だ。
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