【続】興味があるなら恋をしよう
確か…ここら辺のはず。

病院名とうろ覚えの住所から検索してみたら。出てきた。

『橘クリニック』

病院が解ったところで、…個人情報だ。
教えて貰えるはずも無い。
それは来る前から解っていた。

しかも、土曜。
午後は休診だ。うっかりしていた。
検索したついでに、その辺も気を効かせて見ればいいものを…。
病院とは健康診断以外で縁が無いもんだから、そこら辺が物凄く疎くなっていた。
場所さえ解ればいいと思っていた。

駄目元だ。
藍原が熱を出して、実家の近くの病院で診てもらったと言っていた。
その時の薬と診療カード。
チラッと見た物が頭に残っていた。


内科…婦人科もあるのか。診療案内の看板の前で呟いていた。

…びっくりした。
物音がしなかったから。
人が動いた。奥の敷地に人が居るのが見えた。
関係者だろうか。
そうだよな。

綺麗に植えられた鉢の花に水やりをしていた。
じょうろが空になったのだろう。
水道のあるこちらに近付いて来た。

あ、俺、不審者にされるかも。
まずいかな…。
今更慌てて逃げ出すのも余計変か。

「…君は…うちに用かな?」

背の高い紳士は、前を留めずに白衣を着ていた。…ドラマに出て来そうな、そんな雰囲気さえ漂う。
何とも言えない…、俳優のようなドクターだった。

「生憎、午後は休診なんだが、どこか具合が悪いのかい?急を要する事態なら入りなさい」

あー、いやー、違うんだけど。
顔色、悪そうに見えるのかな…。
どうするかな…。

ジッと見つめられた。
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