【続】興味があるなら恋をしよう
えっと、表札…藍原と言う表札は…。

ここら辺は静かな住宅街だな。
隣との距離もあって、住み易そうだ。

静かだし、アンティークっぽい街灯も並んでいて、夜の治安も良さそうだ。


「こんにちは」

え?
不意に後ろから声を掛けられた。

「藍原に用ですか?生憎と、今は出掛けていて、帰りは遅いのですが」

俺は振り返った。

「あ、…あら。もしかして、運命の人?」

「えっ……運命?
あの、こちらの、藍原さんのうちの方でしょうか?」

「ええ、私は、藍原恵利。藍原紬の母親です」

あ…、藍原のお母さん。
…若くて、…綺麗で、正直驚いた。

「さあ、どうぞって、入って貰いたいところだけれど。
さっきも言ったように、主人も居ませんし、こんな素敵な男性と二人で居るなんて訳にはいかないわ。
変な噂が立っても困るし…」

「あ、何だか、すみません」

…どうしよう。
何か具体的な話があって来た訳じゃ無かった。
藍原の家が解ればな、なんて、漠然と、ただそんなつもりで来てみただけだった。

「謝らなくていいの。私が勝手に困ってるだけだから。
どんな形であれ、一度は来てくれるんじゃないかと思っていたの」

「え?」

「主人がいない時で逆に良かったと思ってるの。
どうかしら、近くの公園にでも行きましょうか。
喫茶店だと、訳ありみたいに見えたら、貴方に迷惑が掛かるから」

余程今まで誰かと誤解されるような事があったのだろうか…。
男と二人で居る事を、とても気にしているようにも取れた。

「迷惑とかは無いです。
公園が良ければ行きましょうか」

話を用意している訳じゃない。今の俺には話す事は無い。
公園に行ったところで何を話したらいいんだろう。
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