【続】興味があるなら恋をしよう
「その方と挨拶に来る前。まだあの子に誰もお相手が居ない時、あの子に言ったの。
…どれだけ心に響いたかは、解らないけれどね。
後悔の事を話したわ。それと、素直についても。
心は…、その人の持ってる心のモノは、人の言葉では変えられないモノ。
結局はどんなに迷って、中々決められなくても、最後には誰でも無い、自分で決めるモノ。
その時に、思慮が足りなくて、後で気が付いても、その時考えられる精一杯の頭で考えたのなら、仕方のない事。
答えが出せないなら、恋愛を放棄したようなものね」

「あの、それは」

「あー、ごめんなさい。理屈っぽくて解り辛いでしょ?
ちょっと熱くなってしまったわ。
…これは私の経験談なの。
内緒よ。紬にも言った事は無いの、ここまではね」

後悔した、という事か。

「貴方は紬が好きで、紬も貴方が好きなんでしょ?
貴方がそうなんでしょ?
一条さんが言っていた、紬と縁のある…運命の人」

運命の人、さっきも言われたが、はい、と言うのも…。

「…私は…好きです、凄く好きです。でも、紬さんは、か、…、一条さんを選びました。
諦めきれていないのは私なんです。
…まだ…好きだと言う気持ちをしまい込みたくないんです。…忘れるという気持ちには、一生なれないと思います。
かと言って、まだ穏やかな気持ちにもなり切れてないんです。…まだ好きが強すぎて。
紬さんが選んだ…、邪魔はしてはいけない、そんな葛藤も、どこかにあります。
好きな人の幸せは願わなければと、思う日もあります」

ああ、昔、聞いた事がある、似たような言葉だわ。

「親が言う言葉ではないと思うけど、…多分、好きだという思いは薄れないと思うわ。ずっと好きだと思うの。
どうしても苦しいなら…ううん、…何でも無いわ。
余計な事をまた言うところだった。
今日は何かしらの挨拶では無いものね?
通りすがりよね?」

「…ご挨拶ではありません」

「…そう。今日は、それでいいのよ。私もただのおしゃべりなおばちゃん」

…。

「そろそろ夕飯の支度をしないとね」

「あ、すみません。突然現れたのに、…話をして頂いて」

「また会う事があるかしら…」

「それは…解りません」

「そうね、解らない、わね。
気をつけて帰ってね。あ、会った事は内緒にしておくわね。だから、名前も聞かない。
じゃあね、ここで」

「はい、失礼します」


クリニックの男の人と紬のお母さんは幼なじみだけど、それ以上のモノ、不完全燃焼なモノを持ち続けている、という事なのかな。
俺は何をしに来たんだか…。
ホント、これじゃあ益々ストーカーだよ。
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