【続】興味があるなら恋をしよう
「…落としました」

「は、藍原…。あれ程気をつけろと…。
俺、なるべく急いで帰るけど、まだ直ぐにって訳には。
部屋の前で待てるか?」

「あ、大丈夫です。取れました」

「はあ?」

「落ちましたけど、腕が届くところにガムテープがくっついてました」

…どんだけ腕細いんだ。

「はぁぁ、じゃあ、大丈夫なんだな?入れるな?
開けてみてくれ。開いたか?」

ガタンガタンと音がして、更にカシャカシャと丸めるような音がした。
カャチャン。

「…はい、開きました」

「はぁ、取り敢えず良かった。じゃあ、入って好きにしててくれ。俺、仕事に戻るから」

「あ、坂本…」

切れちゃった。
私の部屋の鍵がどこにあるか聞こうと思ったのに。
きっと少しでも早く仕事を片付けてくれようとしているのね。
ごめんなさい。

こんな関わり方をしてはいけないのに。鍵を忘れたのは本当だけど、…何だかこんなタイミングで…嘘をついてるとか、思われなかったかな。頼らずに、一度、帰ればいいものを。
だけど、帰ったタイミングで課長が帰っていたら…。


余計な事だとは思った。
思ったけど、勝手に冷蔵庫を開けて見た。ご飯は…炊飯器の中は空ね。

一杯分のご飯を炊いた。
奇跡的にハムと葱、卵があったから炒飯が作れる。勝手に炒飯を作った。
これも余計な事。
お風呂も溜めておこう。シャワーだけで良かったんだって、怒られちゃうかも知れない。
でも、迷惑に思われても何かしないでは居られなかった。

まだこの人も段ボールはそのままなのね。…一体、いつになったら、振り分けが出来るんだろう。…フフ。
片付ける気には一向にならないみたいね…。
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