【続】興味があるなら恋をしよう
結局、藍原は午後も休ませる事にした。
何もしなくていいから、横になって身体を休めてくれと言い残して来たが…。
どうだろう。
一人で居ると、何かと家の事をしがちだからな。
んんー。
俺は俺でこの仕事を片付けないとな。
手を休めると書類が溜まる一方だ。
よし。
出来るだけ早く終わらせて帰る努力をしよう。

…違う、そうじゃないな。……早く帰らない方がいいのか。
紬の顔を見たら…つい、節操がなくなる…。

…。

だってだな、まだ…数ヶ月そこそこの付き合いだぞ?
好きなんだぞ?
帰ったら家に居るんだぞ?
…欲しくなるに決まってる。シない方が可笑しい。

があー、も゙ー、…。
…捺印、捺印。未決は…まだこんなにあるのか。はぁ。

…休憩休憩だ。
一旦頭をスッキリさせて来よう。


…。坂本…。
…今、一番会いたくない奴だな。
休憩時間はとうに過ぎているから、誰も居ないと思ったんだが。
そうか、外から帰ったところか。

「お疲れ」

あ。

「お疲れ様です」

…。

「課長。昨日、藍原は貧血ですか?」

「ん、ああ。まあ…睡眠不足とか、そんな感じだな…」

「…そうですか」

寝かせてもらえないってか。

「俺が寝かせないからな」

ふっ。…思った通りの言葉が返ってきてムカつく事はそうそうないな…。

…。

「…新婚さんですからね」

「関係ない」

「え」

「新婚じゃなくなっても関係ない」

「…そう、ですね。好きなんですから、関係ないですね」

「ああ、可愛くて堪らない」

…。

俺は…、いよいよ大人気ないな。坂本に、向きになって…。
もう二度と、坂本に手は出させない。
そう思ったばっかりだったから、こんな話し方を…。

「今日は休みなんですね」

「ああ、休ませたんだ」

…坂本だって心配なんだろ?

「藍原が居ないと事務処理が滞りますね。…奥さんは、仕事、正確で迅速ですから」

俺、藍原が居ないと……困るんだよな…。

「明日は来るよ」

…。

「あ、ではお先です」

「ああ、お疲れ」


フッ、…奥さんか…。言いたくないだろうに。
敢えてわざと言いやがったな。
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