【続】興味があるなら恋をしよう
カ、チャ。

「ただいま…」

敢えてインターホンは押さなかった。
チェーンが掛かっていたら開かないだろうが、それはなかった。

小声で入った。


「ただいま、…紬」

ご飯の用意は出来ていた。
俺の大事な奥さんはソファーに膝を曲げ、横になっていた。
ん、それなりに、休んではいるという事かな。
横に腰掛け、頭を撫でた。
多分、この程度では起きない。
…全く、風邪をひいたらどうする。何も掛けないで。
どうせ、ちょっと横になるだけだからと思ったんだろう。
足先に畳まれていたハーフケットを掛けた。

紬は先に食べたのだろうか。
今夜は帰りが遅くなった。
ダイニングテーブルには一人分の料理しか並んでいない。
どうやら、もう先に食べたようだな。
それなら、慌てる事もない。
取り敢えず、着替えるか…。
鞄を手に、離れようとした。

「匠さん…」

「ん?」

「…」

なんだ、寝言か?

「…ごめんなさい」

「ん?」

「…」

夢を見てるのか。寝言、か…。

…ごめんなさいって。
じっと見ていたらツーッと涙が流れ落ちた。

……。

紬…、いいんだ、…いいんだ。紬は俺の奥さんだ。
涙を拭って頭を撫でた。

…心で泣きながら…いつも、眠っているのかも知れない。だから、心労で余計…。
紬…そこは仕方ない部分でもあるな。…自己責任だからな。そう決めたのは紬だ。
そして帰って来たんだから。

紬、好きだよ。
何があっても変わらないから。大丈夫だよ。

起こさないようにそっと口づけた。
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