【続】興味があるなら恋をしよう
温めてご飯を食べていると、ゴソゴソと紬が動き始めた。
どうやら目が覚めたようだ。

「う、…ん、……ん。………課、長?課長?
キャー、いつ?いつ帰ったのですか?」

「お、慌てるな、落ちるぞ。慌てるな。…ちょっと前だよ」

「う、起こしてくれたら良かったのに…。あ、温めました?」

「ああ、温めたよ。
起こしたよ?キスしたんだけどな、起きなかった」

「えー?あ……それは…」

「無理だよな。…起こさなかったんだ、折角、休んでるんだから。紬はご飯食べたのか?」

「はい、ごめんなさい、先に」

「そうか。なら、いいんだ。ちょっと、こっちにおいで」

「はい」

課長の傍に立った。

「ん、ここに座りなさい」

「え?」

「いいから」

「…はい」

課長の膝の上に腰掛けさせられた。

「どれだけ食べたんだ?
一緒に食べていないから解らない。ちゃんと、量、食べたのか?」

「は、い」

「最近、あまり食べてないんじゃないのか?食が細くなっている気がする」

…意識は無い。でも、もりもり食べているかと言えば、違うかも知れない。あまり、食べてはいない。

「食べたいものは無いのか?気分転換して食べられるなら、晩御飯は外食して帰ろう。
和食屋さんなら、美味しく食べられるんじゃないかな。どうだ?」

「あ、でも…そこまで…」

「毎日する訳じゃない。行ける時は行こう。…沢山食べて太ったっていいから。
…気分転換だよ。気分転換」

…。

「…俺が悪いんだけど、倒れると、心配だから」

「課長…」

「匠だ。…寝言では、呼んでたぞ?」

「え?……寝、言?」

「匠〜、好き〜って、言ってたぞ?」

「えーっ」

「…嘘だ。半分は嘘だ」

「え」

「ご馳走様、美味しかったよ。風呂は?入ったのか?」

まだ。首を振った。

「じゃあ、一緒に入ろう。…何もしないから」

課長は言葉通り、普通に二人で入っただけで何もしなかった。

そして、一緒に寝た。抱きしめられて眠った。
何もしなかった。
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